「氷川清話」に、こういう話が載っています。
海舟が若いとき、英語の勉強をしたいが辞書を買う金がないので、辞書を持っている人からその辞書を借り、夜中に全部書き写したというのです。
日中は仕事をしている身です。暖房もない寒い部屋で、夜中にひたすら辞書を書き写し、翌朝、その辞書を借りた人に返し、また次の日の夜中に借りて書き写したのです。
そして、1冊まるまる書き写したあと、それを売って生活の足しにし、もう1冊を自分用に書き写したということです。
私は、これを読んだとき、今のコピー機がある時代だったら、こういう苦労はしなかっただろうと思うと同時に、辞書を2冊も書き写すという気迫が、新しい時代を切り開く力と共通のものだと思ったのです。
このことでよく考えるのは、今の生活には、わずらわしい苦労がたくさんあるということです。
頭で考えれば数秒でわかることが、手で作業をするとなると、何時間も時には何日もかかります。
しかし、これが三次元の世界の特徴です。
私たちは、時間と空間のある世界に生きているので、時間と空間を経過しなければ目標に到達することはできません。
このことが不便であるとともに、これが実は創造の源でもあるのです。
子供たちの勉強でも、頭で考えて理解すれば、今のテストの範囲ではすぐできるようになることが、手で作業をするとなると、長い時間がかかります。
そして、手を使った作業は、時には間違えたり失敗したりします。
しかし、この無駄な遠回りのように見える時間が、本当は、子供たちが勉強を生きている時間なのです。
それは、勉強に限らず、仕事や人生についても言えることだと思います。
この記事に関するコメント
コメントフォームへ。
今の時代は、能率が価値あることと思われています。
しかし、能率だけを考えると、結局人間は全部機械で置き換わった方がいいということになりかねません。
能率の対極にあるものが個性です。
個性とは、単に人と違うことではなく、その人がその人として生きる原点のようなものです。
プログラミングの仕事をしていると、ほんのちょっとした変更が、システム全体の大改造につながることがよくあります。
簡単な思いつきを実現するだけでも、すぐに数時間、場合によっては数日もかかってしまうことがあるのです。
こういう経験から、プログラミングは、自分の仕事としてやる分にはいいが、人に頼まれてやるものではないとつくづく思ったことがあります。
しかし、たぶん、将来は人工知能が、こういう面倒なことはやってくれるようになります。
大事なことは、プログラミングの技術を身につけることではなく、思いつきができる人間になることだと言われるような時代が将来やってくるのだと思います。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。生き方(41)
言葉の森のスマホアプリは、今回アップルが新しい登録の仕組みにするために、やむをえず終了することになりました。
これまでご利用くださったみなさん、ありがとうございました。
なお、言葉の森のアプリは、ウェブで代替できるものがほとんどでしたので、今後アプリの更新は考えていません。
生徒や保護者や関係者のみなさんとは、ホームページやfacebookやメルマガやオンライン懇談会などで情報交換をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
この記事に関するコメント
コメントフォームへ。
言葉の森のスマホアプリを終了します。
昨日まで新しかったことが、今日には古くなっているような感じで、世の中の変化はかなり速いというのが実感です。
これから新しく出てくると思うのが、既に何人もの方が言っていますが、自動翻訳で世界中の人が言語の壁なく会合できるようになることです。
だから、これからの新しいトレンドは、特に日本の場合、海外への発信になると思っています。
言葉の森のスマホアプリは、これまであまり活用していませんでした。
それは、私(森川林)がスマホをあまり使わず、ほとんどパソコンで仕事をしていたためです。
将来は、スマホとパソコンを超えたデバイスができると思います。
それは、googleグラスのようなもので、空中に仮想のキーボードや画面があるという形になるのではないかと思っています。
いつごろできるかなあ。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。生徒父母連絡(78) 言葉の森サイト(41)
小さな修正や追加が続いたために、わかりにくくなっていた「寺子屋オンライン」の案内を全面改訂しました。
内容的には大きく変わったことはありませんが、これから参加する人にもわかりやすくなるように名称を統一しました。
少人数クラスの作文は、「寺オン作文コース」としました。
少人数クラスの学習で、これまで思考発表クラブや自主学習クラスとしてやっていたところは、「寺オン学習コース」としました。
オンラインで行う個別指導の作文で、これまでオンライン作文としてやっていたところは、「ウェブ作文コース」としました。
オンラインで行う個別指導の自主学習で、これまでオンライン自主学習としてやっていたところは、「ウェブ学習コース」としました。
この変更に伴い、これまで通信作文コースと呼んでいたところは、「電話作文コース」と呼ぶことにしました。
通学作文コースは、これまでと同じ「通学作文コース」です。
| | 個別電話指導 | 少人数寺オン指導 | 個別寺オン指導 | 個別通学指導 |
| 作文 | 電話作文コース | ■寺オン作文コース | ■ウェブ作文コース | 通学作文コース |
| 学習全般 | | ■寺オン学習コース | ■ウェブ学習コース | |
「寺子屋オンライン案内」の方は、わかりにくいところを修正しましたので、読みやすくなっていると思います。
https://www.mori7.com/teraon/
▽「寺子屋オンライン案内」の最後のページの記事の引用です。
====
■■江戸時代の寺子屋の光景
江戸時代の寺子屋の特徴は、次のようなものでした。
1.男女貧富の差なく、誰でもが勉強に参加できた。
2.子供たちは、時にふざけたりいたずらしたりしながら、自由にのびのびと勉強した。(画像の中に、いたずらをしながら勉強している子供たちが何人も描かれています)
3.勉強の中心は、素読、書写、算盤などで、先生が講義するよりも、子供たちが自学自習で取り組むものが中心だった。
この寺子屋教育によって、日本は当時世界一の識字率を誇り、それがのちの日本の急速な近代化を可能にしました。(当時の日本の識字率70~80%、同時代のヨーロッパ先進国の識字率20~30%)
この寺子屋教育の本質はひとことで言えば、子供の自主性の尊重と、子供・家庭・地域の信頼関係に基づいたつながりでした。
言葉の森の寺子屋オンラインは、この江戸時代の寺子屋教育の本質を現代の科学技術と教育文化の中で再生しようとするものです。
====
この記事に関するコメント
コメントフォームへ。
これからの教育で大事になるものは、真の学問を学ぶ力、家庭力、文化力、創造力を育てることだと思います。
ところが、今の教育は、受験力、順応力、点数力、競争力をつけることに偏っています。
そして、真面目でよくできる子ほど、その古い教育に過剰適応しているように思います。
東大の推薦入試や京大の特色入試がその理念として求めているような子を育てることが、これからの新しい教育の目標です。
(それは、合格するテクニックを身につけるという発想とは対極にあるものですが。)
これからの子育てのイメージをひとことで言うと、全教科がよくできているだけではだめなのです。そういう人は世界中にたくさんいるからです。
どれか一つの教科が飛び抜けてよくできているでもダメなのです。そういう人もたくさんいるからです。
だれもやっていないようなことに熱中していることが第一の条件です。
第二は、その上で全教科も一応はできているということです。
そして、その土台の上で、社会に出たら大きな冒険をするのです(笑)。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。寺子屋オンライン(101)