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記事 3676番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
同じ作文の勉強でも、実力のつくものとそうでないものとがある as/3676.html
森川林 2019/04/09 12:36 

 言葉の森の保護者懇談会で、小学校中学年と高学年の生徒の保護者からそれぞれ質問と相談がありました。
 共通しているのは、学習塾に行くようにしたが、塾でも作文の講座があるのでどうしたらいいか、ということでした。
 塾によっては、その作文のコースが必修のところもあるようです。

 他の教室の悪口は言いたくありませんが、学習塾でやっている作文の授業で実力がつくとは思いません。
 ただ文章を書かせて赤ペンで添削するだけでしょうから、そういう指導はある程度の文章力のある人であれば誰でもできます。
 しかし、その添削で作文が上達するかというと、そういうことはまずありません。
 上手に書ける子は、そのまま上手に書くだけですし、上手に書けない子は、いつまでも上手には書けないのです。

 効果があるとしたら、毎回書く練習をするので書くことに慣れるということと、誤字のチェックがあるので間違った字を書かなくなるということです。

 それだけでもいいと思うかもしれませんが、そういう作文指導をずっと受けていると、受験生は我慢してついてきますが、小学3、4年生の生徒では、作文が嫌いになり、途中からかえって苦手になっていくことが多いのです。


 受験で作文を使うことを本気で考えている人は、そのような学習塾の作文指導では満足できないと思います。
 言葉の森でも、毎年秋ごろになってから、受験する生徒が、それまで塾で作文を習っていたが不安なので言葉の森で習いたいとやってくるのです。

 その場合、受験直前の短期間の指導では、実力をつけることは難しいので、既に持っている実力の範囲で合格できる作文を書くような技術的な指導しかできません。
 しかし、その技術的な指導に関してであっても、言葉の森よりもよい指導のできる学習塾や予備校はないと思います。

 作文に限らず、読解力についても、記述力についても同様です。
 だから、学習塾ではこれまで誰も説明していなかったような、読解問題の解き方と、記述問題の書き方と、作文問題の書き方を解説した「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(かんき出版)を出したのです。

 言葉の森で勉強をすれば、誰でも必ず上達します。
 上手な子は更に上手に書けるようになり、下手な子も普通以上に上手に書けるようになります。

 しかし、それには少しだけ条件が必要です。
 作文に書く題材を家族などに取材して準備してくることです。
 きわめて簡単なことですが、その予習がなかなかできない子も多いのです。

 家庭で本をあまり読まないし、音読もしないし、事前の準備もあまりしてこないという生徒が、教室に来てから1時間一生懸命書く、というだけでは実力の向上にはやはり長い時間がかかります。
 作文は、算数数学や英語と違って、その実力の背景に、その子の日常生活の日本語力があるので、勉強してすぐに上達するということはないのです。

 しかし、言葉の森で、毎日2、3分の音読をして、似た例を両親に取材をして準備をしてきた子は、時間の早い遅いはあっても例外なく作文力が上達しています。

 今から本気で実力をつける作文を考えるのであれば、学習塾の間に合わせの作文コースでお茶を濁すのではなく、作文は作文として本格的に勉強していくことをおすすめします。

 それはなぜかと言うと、学習塾の作文の勉強は受験が終わればそれで終わりですが、言葉の森の作文指導は、中学受験で終わるわけでなく、中学生になっても高校生であっても続けることができるからです。

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森川林 20190409  
 塾の先生と言っても、作文指導に関してはみんなアマチュアのようなものです。
 直すところのある子に対する指導はできますが、直すところがない上手な子の指導はできません。
 その反対に、直すところだらけでどこから手をつけていいかわからない子の指導もできません。
 同じ作文指導という看板であっても、中身は全然違うのです。


nane 20190409  
 作文力というものは、自分で自分の作文を評価することはできないという性質を持っています。
 だから、そのほかの勉強と比べて、独学ではできない勉強なのです。
 そこで、言葉の森でまだ習っていない人にも参考にもなるように、作文検定試験をオープンで行うことにしました。
 対象は、小1から高3までですが、小3ぐらいから始めるといいと思います。


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記事 3675番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
4.2週の授業の動画と関連資料(youtubeなど)をアップロードしました as/3675.html
森川林 2019/04/08 19:28 

 4.2週の作文クラスと発表学習クラスの資料を「鳥の村」の「資料室」にアップロードしました。
 作文と発表学習の準備をするときの参考にしてください。

https://www.mori7.net/tori/

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記事 3673番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
新しい学力――発表学習の中で育つ思考力、創造力、表現力 as/3673.html
森川林 2019/04/07 06:32 

 私が、自分の子供がまだ小学生だったら、絶対にやらせたいと思っているのが発表学習クラスの勉強です。
 勉強というよりも、発表ですから、その勉強をしているのは子供自身で、そこに親の協力や対話があるという形の勉強です。

 何度も同じことを書くようですが、私のうちの子2人がやった習い事は言葉の森だけで、その言葉の森で小1から高3まで毎週作文を書いたことが、今ではとてもよかったことだと思っています。
 ただし、私は、子供には苦しい思いをさせない方針だったので、祝日などで授業が休みになった場合は、休みに徹して、ふりかえの授業などはさせませんでした。
 自分が子供だったら、そういう方がうれしいと思うと思っていたからです。

 だから、我が家は皆勤賞のようなものとは無縁でしたから、今でも、何かに皆勤賞を取ったというような子の話を聞くと、ひそかに尊敬します。
 そういう、何かに一つ筋を通す生き方というのはとても大事です。
 ただ、我が家は、皆勤賞で筋を通すという発想がもとからなく、たぶんほかのところで筋を通すような生活をしていたのだと思います。例えば、朝起きたら挨拶をするとか、靴はそろえて脱いでおくとか、悪い言葉は使わないとか、読書は毎日するとか、そういう程度のことですが。

 さて、最初に書いた発表学習クラスというものですが、この勉強のコンセプト(概念)は、まだ少しわかりにくいところがあると思います。
 発表学習とは、子供たちが、1週間の中で自分なりに興味を持ったものを研究し、それを5、6人の少人数のクラスの中で発表するという勉強です。
 子供が興味を持つ分野は、主に自然科学の世界であることが多いので、理科の実験や観察や研究をする子が多いのですが、社会の出来事に関心を持ったり、国語や算数数学の自分なりの問題を作ったりする子もいます。
 また、もっと気軽に、どこかに出かけてこんな経験をしたという発表をする子もいます。例えば、どこかの山に登ったとか、魚を釣りに行ったとか、おばあちゃんの家に遊びに行ったとか、そういう発表です。

 発表には、写真や絵や文章が動画を使えるので、見ごたえのあるものが多く、どの子も、ほかの生徒の発表を見るのが楽しみで参加している面があります。
 だから、欠席するときは、そのときの授業を録画するという家庭もかなりあります。それぐらい面白い発表が多いのです。

 私も、ときどき発表学習クラスの授業を見学しますが、驚くほどレベルが高く、かつ個性的で面白い発表が多いので、こういう発表を少人数クラスのわずか数人の子が見ているだけではもったいないと思うことがよくあります。

 発表学習クラスの運営の原則は、全員が毎週発表し、その発表に対して全員が質問や感想を言うことですから、人数は5、6人が最適です。
 受け身で、ただ聞くだけの参加というものはありません。これが、学校や学習塾での勉強と大きく違うところです。

 私が目指している発表学習の基本は次のようなものです。

 第一に、子供が自分の関心に基づいて、行動したり経験したり実験したりという手足を動かすことです。
 頭の中だけで考えたことや、本を読んで調べただけのことでは、新しい発見はなかなか生まれません。
 本を読んで調べたことであっても、それを自分なりに現実の生活にあてはめてみるような実践的な姿勢が大事です。

 第二に、経験したことを、学問の世界に結びつけ発展させることです。
 どこかに出かけたとか、新しい経験をしたとかいうことだけでなく、その経験を学問の面から見直してみることが大事です。
 例えば、旅行に出かけたら、その旅行先の地理や人口や特産物や歴史などを調べてみるというようなことです。
 遊園地に行ったら、その遊園地の年間入場者数とか沿革とかイベントの種類とかを調べてみるということもできます。

 自分が楽しい経験をしたものであれば、それにまつわる調査や研究は、それなりに興味のあるものになります。
 自分にとって興味のないものを、カリキュラムに沿って調べさせられるのとは違います。
 カリキュラムに沿って調べたことは、学校のテストには役立ちます。
 自分の経験や興味をもとに調べたことは、学校のテストには役立ちません。ディズニーランドの年間入場者数など、どこのテストにも出ないからです。

 しかし、自分の関心や経験をもとに調べたことは、その子供の中に生きた知識として残ります。
 そしてまた、一般のテストには出ないようなその子独自の知識だからこそ、みんなの前で発表する意義があり、その発表を聞く子も興味を持って聞くことができるのです。

 発表学習クラスの基本の第三は、経験し、学問的に発展させたことを、更に創造的に発展させることです。
 それは、単に調べたり実験したり観察したりして終わりにするのではなく、自分なりに工夫したことを付け加えるということです。
 そこには、自分だったらこういうことをしたいとか、未来の予測としてどう変わるかということや、それをほかの分野にあてはめてみるとどうなるかということや、自分なりに考えた別の原因や理由があるかというようなことも含みます。
 つまり、ただ、今わかっているや今あることで終わりにするのではなく、その先のまだないものを自分なりに創造してみることです。
 これは、もちろん簡単なことではないし、それほどうまくできることでもありません。
 しかし、そういう自分なりの創造の気持ちを持って取り組むという姿勢が大事なのです。


 この発表学習クラスの勉強の中で、何が育つかと言えば、主なものは題名にも書いたように、思考力、創造力、表現力ですが、それ以外に、自分から進んで学問に取り組む姿勢、他の生徒とのやりとりの中で育つコミュニケーション力、研究の準備の段階で交わされる親子の対話、他の生徒の発表を見て刺激を受けることによる新しい分野に対する関心、自分の研究を図や文章や話し方によってわかりやすく説明する力など、多様なものがあります。

 それらの学力や関心が育つのは、この発表学習クラスが少人数で構成され、毎回全員が発表する機会を持つ形で運営されているからです。

 人間は、受け身のときは、いくら時間をかけてもあまり成長しません。
 ただおとなしく聞くだけの勉強では、知識は入ってきても、すぐに出ていってしまいます。
 だから、そういう知識は、苦労して何度も反復して頭に入れて、テストに間に合わせなければならないのですが、しかし、テストが終わると、またすぐに忘れてしまうのです。

 これに対して、自分が主体的に参加したときに生まれた知識や経験は、忘れようとしても忘れるものにはなりません。
 自分の生きた経験として残るからです。
 そして、その子が将来何か新しいことを研究したり実践したりしようとしたときに思い出すのは、自分の主体的に参加した経験や知識なのです。

 こういう知識や経験が、これも同じことを何度も書きますが、東大の推薦入試や京大の特色入試で求められているものと同じものです。
 現在、世の中の先端で活躍している人は、誰も、今の詰め込み勉強の知識でいくら高得点を取っても、それが役に立つ社会はもう過去のものになったと思っています。
 それを端的に表す言葉が、「辞書のような人間になるのではなく、辞書を使う人間になれ」です。
 しかし、今の世の中は更に進歩しているので、「辞書のような人間になるのではなく、新しい分野の辞書を作る人間になれ」というところまで行っていると思います。

 こういう世の中の情勢に最も遅れているのが、誰もが想像するように学校と学習塾です。
 だから、子供の将来を真剣に考える親は、今の教育で求められていることに適応するだけでなく、その先にある新しい教育に着手しておく必要があります。
 新しい教育とは、プログラミング教育や、英語教育ではありません。
 もちろん、それらの教育も、また今すでに行われている従来の教育もいいのですが、大事なことは子供が自主的、主体的、創造的に学ぶ教育と姿勢です。

 その教育を実現するプラットフォーム(基盤)が、ウェブ会議システムを利用し、少人数の創造的な学習を目的とした発表学習クラスです(寺子屋オンライン作文も同じコンセプトです)。

 発表学習クラスは、現在、平日の夕方の6時と7時ごろを中心に、小学2年生から小学6年生の生徒の参加で行われています。
 時間帯は、希望者があれば、平日の別の時間や土日にも増やせます。
 また、学年は、中学生や高校生でも参加できますが、今はまだ中高生のクラスはありません。
 小学1年生は、作文クラスの親子作文のように、将来は発表学習クラスの親子発表もできるようにする予定ですが、まだ新小1で参加している子はいません。

 発表学習クラスの受講料は、週1回45分の授業で、月額2,160円です(今後、3,240円に改定する予定です)。
 ただし、発表学習クラスは、言葉の森の作文の勉強をしている生徒が対象です。
 将来は、発表学習クラスだけを単独で受講できる仕組みにする予定です。

 なぜ発表学習クラスのような密度の濃い勉強が、上記のような低料金の受講料で行われているかというと、言葉の森では発表学習クラスをある程度採算を度外視して考えているからです。
 つまり、こういう価値ある未来の勉強をより多くの子供たちが経験する必要があると思っているからです。

 そのため、今後、発表学習クラスの生徒がいくら増えてもいいように、森林プロジェクトの寺オン講師が、寺子屋オンラインの作文クラスや発表学習クラスを担当できるようにしています。

 今はまだ発表学習クラスに参加している生徒は30名ほどですが、今後このクラスはもっと増え、新しい勉強を世の中に提供していくようになると思います。


▽発表学習クラス無料体験フォーム
https://www.mori7.net/teraon/teraform_hg.php

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森川林 20190407  
 小学生のころにおすすめの習い事は何かと聞かれたら、私は迷わず、寺オン作文と発表学習をすすめます。
 自主学習も重要ですが、それは家庭で本人と親が工夫すればできることですから、ここでは省略します。
 なぜ、寺オン作文と発表学習が大事かというと、この二つは人に教わる勉強ではなく自分が主体的に取り組む勉強で、しかもその勉強の中で友達との知的な交流があるからです。


nane 20190407  
 主体的な勉強の唯一の弱点は、手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けることです。
 それぐらいなら、詰め込みの教わる勉強で、同じぐらいの時間を費やした方がいいと思う人もいるかもしれません。
 しかし、長い目で見れば、詰め込みの勉強はしばらくは役に立つように見えても、あとにはほとんど何も残りません。
 主体的な勉強は、手を抜いたときも含めて、必ずその子の知的な財産として残ります。
(今のところ、手を抜いてやっている子はひとりもいませんが、時間的に忙しいときには簡単な発表になることはもちろんあります。それはそれでいいのです。)


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記事 3671番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
記述力よりも現実的な作文力 as/3671.html
森川林 2019/04/06 16:26 

 ある大手の進学塾の国語科の責任者という方が教えている「記述力アップ講座」というものを見ましたが、方法論らしいものは何もありませんでした。
 ただ、何しろたくさん書くことに尽きるという説明でした。
 これは、どこの学習塾でも同じだと思います。

 このことを見てもわかるように、学習塾の記述力対策というのは、あってもないようなものです。
 それは、なぜかというと、入試問題の記述問題の評価の基準自体が、あってもないようなものだからです。

 前にも書きましたが、ある東京都の都立中高一貫校を受検する小学6年生の生徒が、電話で相談してきたことがありました。
 それは、その子の書いた記述問題の解答が、その学校で出されている模範解答とかなり違うので、どうしたらよいかという質問でした。
 そこで、その子の書いた解答と、その学校で出されている模範解答とを見てみると、その子の書いた解答の方が、ずっと内容的にも表現的にもレベルの高いものだったのです。
 学校で出している模範解答ですから、その学校の国語の先生が、しかも責任ある立場の人が書いたのだと思います。
 それが、小学6年生の国語力のある生徒の解答よりも、一段下のレベルだったのです。

 このことは、つまり記述問題には、明確な解答の基準がないということです。
 解答の基準がないから、対策の方法論も生まれてこないのです。


 言葉の森で記述問題の指導をするようになったのは、ある年、東大を受ける生徒が、記述対策をしてほしいと言ってきたことがきっかけでした。
 東大の国語の現代文には、選択問題はほとんどありません。すべて短い記述式の問題です。
 これは、国語の問題に限らず、理科も社会も同様で、○×で答えられるような問題ではなくほとんどが記述中心の問題構成になっているのです。
 したがって、東大の進学を目指す中高一貫校の国語の試験問題も、記述問題が中心です。

 そこで、記述対策の方法論として、「対比して書く」ということを指導したのです。
 これは、「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(かんき出版)にも10編ほど例を載せています。

 「対比して書く」とは、どういうことかというと、記述問題の答えを、「○○は、Aである」と書くだけでなく、文中に隠れているBという対比される概念と結びつけて、「○○は、BではなくAである」と書いていくことです。
 この対比には、さまざまなパターンがあります。「BではなくAである」「「確かにBもわかるが、しかしAである」「BでありながらAである」「BだったものがAになる」「Bだと思っていたものがAだった」など。

 記述問題で問われるような部分は、話が屈折しているところです。
 物語文で言えば、「うれしかったが、普通の顔をしていた」とか、反対に、「悲しかったが、笑顔を見せた」というような場面です。
 だから、対比して考えるという方法論で書くと、記述の文章の輪郭がはっきりして、表現の焦点が絞られてくるのです。
 これは、説明文の問題の場合も同様です。

 しかし、これは主に大学入試に関して言える話で、中学入試の場合は、別の要素が加わります。
 中学入試の場合は、抽象的な語彙を使って書く力があるかどうかが大きな差になります。
 それは、小学6年生では、抽象的な語彙を自由に使えるかどうかが国語力の最も大きい差になっているからです。

 では、その抽象的な語彙力の対策はどうしたらよいかというと、抽象的な語彙や考え方が書かれている難しい本を読むことです。
 小学校高学年で難しい本を楽しく読めるようになるためには、小学校低中学年でやさしい面白い本をたくさん読んで読む力をつけておく必要があります。
 だから、国語力の本当の対策は、国語の問題集を解くことではなく、小さいころから読書に親しんでおくことなのです。


 さて、記述問題が国語の試験で取り上げられるようになったのは、○×式の入試に対する反省からです。
 2020年の入試改革でも、現代文の記述試験をどうするかということが話題になっていましたが、私はこの記述問題の採用はうまくいかないと思います。
 それは、記述問題ということ自体が、中途半端な位置にあるものだからです。

 ○×式の選択問題の対極にあるのは、記述問題ではなく、作文小論文問題です。
 ○か×かで答えるよりも、数百字の文章で答える方がずっと考える力を使います。
 数百字というのは、600字から1200字、つまり人が普通に1時間で書けるような量の文章です。

 しかし、数百字の文章を書かせる問題を出せば、採点する側が対応できません。
 また、作文試験を課している学校のほとんどは、その数百字の文章を評価する基準を持っていません。
 それは、記述問題の評価の基準がないのと同じです。

 ○×式の問題では考える力が育たない、しかし600字から1200字の作文試験では評価しきれない。
 そこで、妥協の案として、中途半端な50字とか100字の記述問題が出てきたのです。
 中途半端なものは、最終的にはどちらかに吸収されます。
 だから、記述問題というものは、将来なくなっていきます。

 その記述問題をコンピュータで採点するというのも、また間違った方向です。
 50字や100字の記述問題の採点では、生徒の学力と記述の点数との誤差はかなり大きくなります。
 採点基準を明確にすればするほど、コンピュータ採点の対策がしやすくなり、考える力よりもうまく答えるコツを身につけた方が有利になります。

 だから、せっかくコンピュータを採点に利用するならば、機械的なアルゴリズムではなく、深層学習を使った採点にする必要があります。
 その深層学習を使った評価に最も適しているのは、短い記述問題ではなく、長い作文問題なのです。
 ある意味で、長い作文であればあるほど、その生徒の真の学力は正しく評価されます。
 一日に長い作文を書かせるのが難しいのであれば、日を置いて複数の作文を書かせる形でもいいのです。

 近い将来、この深層学習を使った作文評価ができるようになります。
 すると、中途半端な記述問題というものはなくなります。
 ○×式の問題は、基礎学力をチェックするために残りますが、記憶力に頼るような瑣末な問題はなくなります。

 だから、今の小学生は、記述問題の対策を考えるよりも、まず本を読むことと、作文を書く力をつけておくことです。
 記述力よりも現実的な作文力というのは、評価の面でも、勉強の面でも言えることなのです。

 ただし、言葉の森の自主学習コースでは、国語の問題集読書のあとに、50字から60字の記述練習をしています。
 それは、今の時点では、まだ自分の考えを50字から100字で簡潔にしかもすばやく書く力は必要とされているからです。

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森川林 20190406  
 選択問題の対極にあるのは、作文問題です。
 しかし、作文問題では時間がかかりすぎて評価しきれないので、妥協の案として中途半端な記述問題が出てきたのです。
 だから、いまだに記述問題の明確な評価の基準というものはありません。
 基準のないもので点数をつけられるのですから、生徒の方も大変です(笑)。

nane 20190406  
 記述問題に明確な評価の基準がないのと同様に、作文問題の評価にも基準はありません。
 いま、入試に作文試験を課している学校のほとんどは、評価の基準がないまま点数をつけていると思います。
 教育には、誰にもわかる明確で客観的な基準が必要なのです。


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記事 3669番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
今後予測される経済危機にどう対処するか――新しく来る未来の社会を展望する as/3669.html
森川林 2019/04/06 03:22 

 2020年11月の米大統領選の直後に株価が大暴落するという予測があります。
 そして、株価の暴落と並行して、ドル基軸体制が崩壊し、ハイパーインフレになるとも言われています。
 そこに、現在のアメリカを中心とした農業危機が加われば、食料などは更に高騰するでしょう。

 誰もが、今の先進国のマネー印刷バブルの限界に気づいています。
 しかし、このバブルの崩壊を止める方法はもうないようです。
 リーマンショックの対策で、どの国も金融政策の材料を使い尽くしてしまったからです。

 アメリカのドルが崩壊すれば、ドル資産を大量に抱えている日本も無事ではいられません。
 ただし、国債のほとんどが国内で保有されている日本は、むしろ世界のマネーの逃避先になり、日本だけは円も株価も高騰するという予測もあります。
 しかし、日本も含めた世界的な規模で、これまでのバブル経済の上に成り立っていた多くの産業は衰退し、それに伴ってあらゆるところで倒産や失業が生まれるでしょう。

 先進国のGDPを形成しているものの中には、人間にとって本当は価値のないものが大量に含まれていました。
 その典型が軍事費ですが、それ以外にも、多くの人が仕事に携わっているその仕事そのものが、深く考えれば人間にとって本当には価値のないものであるということがかなりあったのです。

 だから、今後予測される経済危機のあとに来る社会は、真に価値あるものが経済の中心になる社会です。
 その真に価値あるものとは、第一に創造です。そして、第二はその創造の土台となる向上です。第三は社会への貢献です。第四は幸福です。
 人間の生きる目的でもある、幸福、向上、創造、貢献が、最後に価値あるものとして残るものなのです。

 これらの真に価値あるものの中でも、最も大事なものは、新しい創造を生み出すことと、その創造を生み出せるように子供たちを成長させることです。
 だから、未来の社会は、創造と子供たちの成長を軸にして成り立つ社会になるのです。

 しかし、そのような先の展望があるとしても、とりあえず人間は当面の経済危機に対処しなければなりません。
 ここで考えなければならないのは、バブルの崩壊によって失われる虚構の経済があると同時に、ほとんどの人の日常生活は実質的な意味のある経済で成り立っていたことです。
 ものを食べたり、電車に乗ったり、本を読んだり、勉強をしたりするのは、バブルの崩壊とともに失われる虚構の経済と同じものではありません。

 だから、ここでバブル崩壊によって失われるマネーとは別に、意味のある経済を支えるマネーを作っておく必要があるのです。
 その手段として最適なものが仮想通貨です。

 本来であれば、国が公式の仮想通貨を発行し、その仮想通貨によってベーシックインカムを国民全員に支給し、それで生活に必要な経済を回していくのがいいのです。
 しかし、そういうことが果たしてできるかどうかはわかりませんから、自分たちで独自に対策を立てておく必要があります。

 そこで、言葉の森が考えているのは、経済危機と同時に、言葉の森の生徒全員に、勉強の継続に必要は仮想通貨を発行することです。
 ベーシックインカムのように、毎月定期的に通貨を発行すれば、その通貨で勉強を続けることができます。
 そして、講師の給与も仮想通貨で支給するようになります。
 また、新しく教材を作ったり、新しい講座を始めたりする人は、自分の持っている仮想通貨を増やすことができます。
 このようにして、バブル崩壊で失われるマネーとは別に、生活に必要な意味ある経済を独自の通貨で回していくのです。

 では、衣食住などのリアルに必要なものはどうするかというと、それはそれで別の対処の仕方が考えられます。
 そのひとつは、リアルな必需品を流通させる別の仮想通貨圏と連携することです。

 教育や文化を中心とした経済のよいところは、誰もが消費者であるとともに生産者になれることです。
 これまでの工業生産を中心とした経済の特徴は、生産が少数の企業によって担われ、ほとんどの人が消費者であるとともに、企業に雇用される労働者であったことです。
 この仕組みは、経済の発展期には社会を豊かにする原動力になりましたが、生産力が飛躍的に上がり、生産者が更に少数の企業に集中するにつれて貧富の格差を生み出し、それが結局はバブル経済を生み出し、経済そのものの崩壊を招くようになったのです。

 新しい社会は、農業と工業における高度に発達した生産力は、そのまま湯水のように利用できる豊かな社会になります。
 そして、人が消費することを求めるものは、教育的文化的なものになり、それはまた、人がそれぞれの個性を生かして生産できるものになるのです。

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森川林 20190406  
 今のままの経済社会がうまく回っていくと思っている人はほとんどいません。
 しかし同時に、このあとにいい社会が来ると思っている人は多くいます。
 それも特に、日本を中心にいい社会が生まれるのです。
 その土台となるものが、情報通信技術の発達と、日本にある教育と文化の伝統です。


nane 20190406  
 ゴルフやサッカーもひとつの経済の裾野を生み出していますが、それら自体に価値があるのではありません。
 サッカーの勝敗をもとにけんかが始まることがあるというのを、他の惑星の人が見たら不思議に思うでしょう。
 大事なことは、そのもの自体の価値ではなく、それが流通していることなのです。
 だから、これからの社会に必要なのは、新しく流通するもので、しかもそれ自体に価値があるものを見出すことです。
 それが創造を中心とした文化と教育で、その流通が加速できるのは、それらが誰もが消費するとともに、誰もが生産できるものであるからです。
 だから、言葉の森で、寺子屋オンラインと森林プロジェクトを始めたのです。


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手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

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