毎年夏になると、学校から感想文や作文の宿題が出されます。
この宿題の問題は、三つあります。
第一に、感想文は本来小学校低中学年では、書けないものであることです。
第二に、中学生の宿題でよく出されるのが、「人権」や「税金」という決まりきったものであることです。
第三に、作文や感想文の肝心の指導が学校でなされず、すべて家庭への宿題という形で丸投げされていることです。
第一の話から説明すると、感想文が意味のある勉強になるのは小学5年生からです。このころになると、構成力や思考力が育ってくるからです。
小学4年生までは、文章全体の構造を考えたり、物事の背後にあるテーマをとらえたりする力はまだ育っていません。しかし、感想文で最も大事なのが、この全体の構造とテーマなのです。
では、なぜ小学校低中学年の感想文を上手に書ける子がいるかというと、それは、たまたまよく書けた文章に、親や先生が手を入れているからです。
しかし、それでは、親や先生の勉強であって、子供の勉強ではありません。だから、私は、小学校低学年の保護者の方から、「学校で感想文の宿題が出ているのですが」という相談があったときは、「感想文は、お母さんが書いてあげてください。子供は楽しく本を読むだけでいいです」と答えています。
第二の、中学生での「人権」や「税金」の作文ですが、なぜこのような宿題が出るかというと、ただコンクールがあるという理由からです。決して教育的な目標があって宿題を出しているのではありません。
教育的な意義を考えるなら、もっと子供が自分の身近な経験に照らし合わせて考えるような課題にするべきです。
このコンクールへの出品というのも、また問題があります。コンクールというものは、一見、学習の評価に似ていますが、実は評価されるのはひとにぎりの入選した子だけで、大多数の子は大きくまとめてボツになるだけです。だから、自分の書いたものが賞に入らなかったことはわかりますが、それ以上のことは何もわかりません。
第三の、指導の不在という問題が、実はいちばん大きい問題です。
作文や感想文をどういう手順でどう書けばいいかということは、学校ではほとんど教えられていません。日常の学習の中で文章の書き方の指導がないために、感想文というと、あらすじだけを長々と書いたり、感想だけを延々と繰り返したりする子が出てくるのです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
実は、小学校高学年からの感想文は、やり方によってはかなり有意義な勉強です。難しい文章を読んで、それを自分なりに考え、裏づけとなる実例を通して、読み手にわかるように書くというのは、読解力、思考力、表現力の総合的な学習になります。
しかし、それには前提が必要です。
ひとつは、生徒が事前にその課題の文章を何度か繰り返し読んでおくことです。
もうひとつは、生徒ができれば身近な人(家族など)と話をして、その文章の具体例を考えておくことです。
そして最後に、先生が、書き方の流れを事前に説明し、それから生徒に書かせることです。
こういうやり方をすれば、小学校高学年、中学生、高校生の感想文は、子供の学力を育てる優れた勉強になるのです。
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おはようございます。
昨日の記事は「読書感想文批判」などというきつい言葉を使いま?したが、それは、小学校低中学年で無意味な感想文の宿題に悩まさ?れる子供たちが少しでも少なくなるようにと思ってのことです。
うちの教室では、小学校3年生以上は、毎月1回から3回の感想?文を書く練習をしています。通信教育で勉強する生徒が多いのです?が、毎週の提出率は90パーセント以上です。(それは生徒ひとり?ひとりに、担当の講師による電話の説明があるからだと思います)
だから、単なる批判ではなく、その裏づけとなる実績もあるとい?うことです。
感想文は、勉強として意義のあるものです。しかし、そのために?は勉強の方法が確立している必要があるのです。(自慢っぽくなっ?てしまいましたが(^^ゞ)
... その感想文の書き方のコツは、今度ノートにアップしたいと思い?ます。
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初めてコメント致します。中学校国語教員五十歳です。
1「読書感想文」を数十年間書かせたことがありません。そのことで生徒の作文能力が他学校の生徒より劣っていると感じたことは一度だにありません。
3「感想文・思いを書く作文」を国語教育で扱うなとは言いません。しかし生徒に必要なのは、字数を限り、テーマを決めつけ、評価方法に沿った作文を書く力です。感想・思いは教えなくても生徒はメールでいくらも書いています。それは作文能力ではありません。
4「作文を宿題に」出したこと自体数十年間ありません。学校として出せと言われた場合は別です。作文を宿題にすることは学習能力習得にほとんど効果はありません。
5「作文には見本と評価方法」を必ず示します。体育、音楽などは見本を見せ、その通り習得させます。国語でも見本と手順を示さなければできるはずがありません。
こちらのページを拝見できて幸いでした。これから1ページずつ読ませて頂きます。
hyokoさん、コメントありがとうございます。
私は、高校や大学で、もっとレポートをどんどん書かせるような勉強をさせていくといいと思います。
ただ、そのためには指導と評価の方法を工夫しないと、教える側の負担が大きくなりすぎるという問題があります。
ソーシャル・メディアを利用して、生徒どうしが互いの文章にコメントを書き合うなどの方法を工夫していく必要もあると思います。
これからもよろしくお願いします。
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今日の一文字は「見」。
「目」と、「人」を表す“あし”の部分からなり、「人が目をはた?らかせる」という意味の“会意文字”だそうです。
以前、まえ先生から「『親』は木の上から見るもの」という投稿を?いただきましたが、やはり「子供をよく見る」ことは、教育の上で?何より大切だと思います。
……などと、独り身の私が言うのも説得力がないので、身内に限ら?ず、他人のことも自分のことも、しっかり見る、のが肝要、という?ことで(^^;)
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本日の一文字は……「忙」。
「りっしんべん」の「心」を「なくす」、と書いて“いそがしい”?。
かなりポピュラーに解釈されている字ですね。やはり人間にとって?実感深いからか。(笑)
ネガティブさを呼び起こす字は極力取り上げない方針なのですが、?新学期の教材発送が無事に完了しました、ということで。
忙しさの後にへろへろになった、情けないっぽい字体を選んでみま?した。(おいおい)
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本日の一文字は「食」。
これはもう、人間にとってなくてはならないものですね。
森の木グループでも、食べ物に関する話題はかなり豊富です。(笑?)
食べることは、健康に生きるために何よりもまず必要だと言っても?いいでしょう。
「医食同源」という四字熟語もありますし、「人」が「良くなる」?と書いて「食」、などと言ったりもします。
非常に納得がいきますね。
……が、調べたところによると、この字は確かに“会意文字”では?あれど、「人」と「良」から成っているわけではない模様。
PCでは表記が難しいのですが、「穀物」を「あつめる」という意?味の何やら古そうな二字がくっついて出来上がったのだそうです。
全然知らなかった……。
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本日の一字は……グループの皆様に挑戦。
さあ、なんと読む?
ヒント
・もちろん「あまい」ではありません。
・これ一字で意味を成しています。送り仮名などはつきません。
・バラしてみると、「ああ……」となるかも?
・当グループの現在の状態に関係があります。画面右、顔がいっぱ?い並んでいるところを見ると、実は答えが……。(笑)
解答は後日!

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